「ふる」 感想

母からすすめられて読みました。

 

最近感想を書くのをさぼっていたが、これは、とおもう本だったので記事に残すことにする。

西加奈子さんの本は他に「窓の魚」と「しずく」を読んだことがある。両方ともおもしろかったけど、おもしろかったで終わりという感じだった。

この本が自分の心に残った理由はたくさんあるけど、自分が普段考えていることがそのまま書いてある、というのがまずある。なにげないいつもの会話を愛おしく感じる気持ちとか、誰かをいらだたせてしまったときの居心地の悪さとか、日常でふと私は女なんだと実感させられることとか。

主人公の生き方はある意味理想的だと読み始めたときに感じた。誰のこともけなさない、お互いを傷つけない距離感を保つ。そのかわり多くの人は彼女のそばを通り過ぎていく。小学校に入る前からの回想のなかで、その時々の友人や恋人の名前がフルネームで語られても現在の物語にはほとんど登場しない。そしてどの回想にも、現在の物語にも登場する新田人生。普通の女の人の日常が書かれているはずだけど、少し不思議で、謎が残されたまま物語が進んでいく。そして最後にはっと気付かされる。

私がこの本を好きなのは、決して説教臭くないところだ。主人公は最後に過去を振り返り生き方を変えようとするが、その生き方を読者に強要はしない。はじめから終わりまで彼女の物語なのが良い。

 

少し時間を置いて、何回でも読み直したいなとおもった。

本を読んだ時の感動とか驚きとか共感とかをなかなかそのまま文章にはできないのはもどかしいなあ。